2014年4月26日土曜日

「ウォルト・ディズニーの約束」

予想以上に良い作品で、何度も何度も涙腺をやられました。エマ・トンプソンの演技が特に素晴らしかったと思います。八丁座にて。(原題「Saving Mr. Banks」)



「メリー・ポピンズ」の原作者で映画化を拒んだP.L.トラヴァースと、20年間映画化を望み続けたウォルト・ディズニー、2人をめぐるお話。

「メリー・ポピンズ」を観ておいたほうが、何倍も楽しめます。観ている人にしか分からない小ネタもいろいろありますし、あの名曲たちが生まれる瞬間を垣間見られるワクワク感といったら!予習を断然オススメします。

私はジュリー・アンドリュースの映画はもちろん、NYでミュージカルも観てサントラもそれぞれ持っているほどなので、ちょっとひいき目が入ってしまっているかもしれません。けれど、そういった点を別にしても、人生や家族、愛や孤独について、いろんなことを考えさせられるしみじみと良い作品でした。言葉にしてしまうと陳腐ですけど。頑固でなかなか自分を曲げられないトラヴァースに親近感を覚えてしまい、憎たらしい口調もしまいには可愛く思えてきてしまったほど。

みんな、いろんなことを抱えて生きている。忘れられない痛みも、孤独も、きっと誰もが抱えている。それが昇華される瞬間は、あったりなかったりするのだろうと思いながら、ずっと心を閉ざしていたトラヴァースが笑顔でダンスのステップを踏んだ瞬間には涙があふれて止まらなかったのでした。

運転手さんとのささやかな交流が心に沁みます。芝生の上に座って、つかの間少女時代に戻ったかのようなトラヴァースの姿も印象的。

「あなたたち、子供はいないの?」とトラヴァースがスタッフに詰め寄るシーンがあります。「子供がいるなら分かるでしょ、こういうときは…」と説得する場面なのですが、面白いことに作中でトラヴァースには夫や子供の影がないんですよね。あとで調べてみたら、やはり実子はいなかったようで。それでもこういうセリフが出てくる、それはどういうことかといえば、私たちにはみな子供だった頃があるということなのだなぁと。「子供がいないあなたには分からない」と言われたって、誰でも子供だった時代はあるのだよなぁと。そんな当たり前のことにハッとさせられたりしました。

トラヴァースを支えていたのは、そして彼女に子どもたちの心を掴む名作を書かせたのは、遠い日の、しかし深く刻まれた子供時代の記憶だったのでしょう。

子供時代のエピソードと、ディズニーとの攻防、そしてメリー・ポピンズの世界。3つが実に見事に絡み合って展開していきます。エンドロールはぜひ最後まで見てください(^_-)

もう一度観たい、そして久々にDVDを買おうと思った作品でした。オススメです。

「A spoonful of sugar」を口ずさんだ帰り道


 

2014年4月21日月曜日

江波山気象館から、ええバーへ

(※【私信です】 先日、私が昔字幕をつけた映画についてお問い合わせフォームからご連絡くださったT様へ。メールをお送りしたのですがエラーで戻って来てしまいます。アドレスをご確認いただけると幸いです)

さて先日、ついでがあったので江波山の気象館に寄ってきました。いろんな体験コーナーがあるとどこかで読んで、ちょっと気になっていたのです。登山タグをつけようか迷いましたが、とりあえず今回ははずしておきます…(標高38m・笑)

小さな山の上に見えるのが気象館

入り口

建物の雰囲気からそうかなとは思ったのですが、やはり被爆建物でした。内部の壁にも、爆風でガラスが突き刺さった跡などがあります。

 当時の広島地方気象台

一部の壁は当時のまま残してある

さて、見学…といっても、施設の規模はさほど大きくはありません。内容自体は小さなお子さん向けですかね。

気象とは何の関係もない…!

台風の中を体験するコーナー、風速を体験するコーナー、雷を作るコーナーなど、体験コーナーは結構楽しんでしまいました。

台風コーナー 「もくもく、雲が出てきましたよ~」

百葉箱などもおいてありました。屋上は見晴らしが良く、晴れていたらとても気持ちがよさそうです。そういえば江波は桜も有名だそう。残念ながら、もう終わってしまっていましたけど。なんとなく尾道にも似た雰囲気があったこのあたり。

屋上から

ここからは少し(10分ほど?)歩きますが、以前友達に「江波にはエバーというええバーがある」と聞いていたので、寄ってきました。住宅街の中にひっそりと溶け込んでいて、うっかりすると通り過ぎてしまいそうなたたずまい。

珈琲と古本とお酒 EBAR

元気なワンコにお出迎えされました

明るいうちからギネス。古本もいろいろ置いてあり、自由に読めます。焼きたてのピザがとっても美味しかった!

ギネス大好き♪

流れていた音楽は古いジャズ。ちょっと市電の駅からは遠いのが残念なのですが、また行きたいなーと思えるお店でした。ゆったりとした素敵な時間に感謝(^^)

こんな家に住みたい

 

2014年4月13日日曜日

「英語で読む村上春樹」-贅沢な翻訳ワークショップ

昨年度は時々しか聞けなかったNHKラジオ講座「英語で読む村上春樹」。今年度は「踊る小人」と「トニー滝谷」だそうです。「トニー滝谷」は読んだことがあり印象に残る作品だったので、またちょっと聞いてみようかなと手を伸ばしました。講師の方が試訳をつけたというお話にも惹かれました。

春の風物詩

テキストの構成は昨年度に比べて見やすくなっています。表現のポイント解説が同じページにあるので、行ったり来たりする必要がありません。

今回特筆すべきは翻訳ワークショップのコーナーがあることです。30分の番組中、半分ほどを占めています。最初の10分程度が通読と全体の解説、15分ほどが翻訳ワークショップ、そして最後にコラム的な内容が5分ほど。テキストをそのまま読み上げるような場面はほとんどないので、放送とテキストそれぞれを存分に楽しめそうです。

今回の作品も、出版済みのアメリカ版はジェイ・ルービン氏の翻訳です。講師の新元先生が直訳に近い試訳をつけてくださっており、そこからルービン訳へのルートをたどるという構成。このようなルートを見せていただけるのは、とても贅沢なことと感じます。

文学作品ですし、ルービン訳のほうが凝った言い回しになったりするのかと思いきや、むしろシンプルで力強いことのほうが多いです。例として一文だけ引用させていただきます。

「それでも小人は休むことなく踊り続けた。」(村上氏の原文)
「Still, he kept dancing without a break.」(新元先生の試訳)
「But nothing could stop him.」(ルービン訳)

いくつものパラグラフがこうして並べられており、比較するととても興味深いです。読めば読むほどうなってばかり。こうして見ると、躍動感とか臨場感のようなものがよく分かる気がします。

巻末の連載も面白そうで、テキストを買ってからまず一気に読んでしまいました。

今期はできるだけ聞いていけたらと思います。が、なかなか習慣化するのは難しいのですよね…。私は一回目からさっそく本放送も再放送も聞き逃し(おいっ)、ストリーミングにお世話になりました。何ともありがたい時代です。

一週間前の番組ならここで聞けます。登録が必要になってしまったので、ちょっと面倒ですけど。
NHKゴガク

村上春樹ファンでなくとも楽しめる内容で、翻訳にかかわる方には特にオススメです。

 

2014年4月12日土曜日

「英語のあや -言葉を学ぶとはどういうことか-」

英文ライティングの参考書としてはもちろん、言葉というものを新鮮な視点でとらえ直す意味でも面白い一冊でした。

英語のあや -言葉を学ぶとはどういうことか-(トム・ガリー著)




前半は科学英語についての具体的な指摘が多く、技術翻訳にはそのまま生かせるものばかり。定冠詞や不定冠詞、ニュアンスの違いなどの問題はもちろん、日本語では「主題」という要素が中心となるが英語では「主語」が中心になるなど、普段仕事の中でもよく見かける例が挙げられています。間違いではない英語、ではなく、英語らしい英語にするには…?という項は、一番目指していきたいところでもあります。

後半のエッセイがまた面白かったです。トム・ガリー氏ご自身が日本語を学ぶ過程や、翻訳者として仕事をしていた時期、学生たちに英語を教える過程など、さまざまな場面で気づいたことが書きとめられています。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」という一文を英訳すると、訳し方によって47字、81字、197字のように大きな幅で文字数が変わってくる例も非常に興味深いものでした。

昔から「日本語はとても難しい言語だな」とぼんやり感じてはいたのですが、ガリー氏が学んだときの苦労を克明に描き出してくれています。たとえばマンガを読んでいて「わすれちゃった」という日本語に遭遇したとき。「ちゃった」の意味にたどりつくまで、和英を引いて国語辞典を引いて、国語辞典の漢字の読みが分からず画数から漢和辞典を引いて、またさらに…と読んでいるだけで気が遠くなってきます。

「上機嫌な起源」なんて洒落た小見出しを見たときには「おお!」と感動しましたが、これほど自在に日本語を操るまでには底知れない苦労があったのですね。

ガリー氏の指摘によれば、一冊で最低限の役割を果たせる日本語学習者向けの辞書というものが存在していないということで、英語を母語とする人々のための和英辞典を作りたいとずっと考えてらっしゃるそうです。でも、なかなか企画が通らないのだとか。確かに、ちょっとした読み物だけで何冊もの辞書を繰り返し引かなければならないのは苦行ですよね。それに対して英語を学ぶ日本人の教材はなんとバラエティ豊かで恵まれているのだろう…としみじみ思います。

流暢な日本語で書かれているにもかかわらず、文章の端々ににじみ出る謙虚な姿勢にも感銘を受けました。自分の努力などまだまだ全然足りないなと、良い刺激をもらえた一冊でした。


なごり桜

 

2014年4月10日木曜日

フリーランスの退職金-小規模企業共済

個人事業主としてお仕事をされている方ならご存知の方が多いと思いますが、「小規模企業共済」に本日やっと申し込んできました。フリーランスにとっての退職金のようなもので、1000~70000円の範囲で掛金は自由に決められます。増額はいつでもできますが、減額にはちょっと条件があるようです。


以前から、申し込もうと思いつつ重い腰が上がらずにいましたが、利益を得るには20年以上の払い込みが必要なのでそろそろ後がない…!と銀行へ。銀行の他、商工会議所などでも申し込みが可能です。20年以上払い込めば預金に比べて断然利率が良いのと、一番大きいメリットは確定申告で全額控除になることですね。翻訳業なんて特に経費が少ないので、控除はできるだけ増やしたいものです。

申込書は事前に上記HPで請求、自宅で記入していきました。他に必要なのは確定申告書の控え。私はいつも郵送で確定申告を済ませてしまうのですが、今年はこれのために控えに判を押して返送してもらいました(返信用封筒に切手を貼って同封すればすぐに送り返してもらえます)。あと、1ヶ月分の掛金と念のために印鑑。

銀行ではとても感じよく対応していただき、30分ほどで手続きは終了。思ったより時間はかかりましたが、なんだか大仕事を終えたようでスッキリ。あとは自動的に引き落とされるだけ。

できるだけこれの存在は忘れておこうと思います。そして忘れたころに、「お!こんなボーナスが~」と喜べたらいいなと…無理かな…

サラリーマンのように手厚い保障のない個人事業主にとって、こういった備えは大切ですね。やっと老後のことを切実に考えられるようになってきました。いつまでバリバリ仕事できるかも分からないし、せめて社会に迷惑をかけずに生きられるようにしておかなければ(^-^;)

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そういえば、個人事業主にとっては消費税UPの話題も旬です。消費税をいただく立場ですから。でも、払いたくないという会社もあるようで…困ったものですね。こういう時に取引先の信頼度が測れる気がします。私は幸い、メインの取引先はいずれも先方から外税対応のご連絡をいただきました。他は取引が発生した際に、都度確認していこうと思っています。

桜は散りはじめて、ツツジの季節