2015年8月21日金曜日

日本赤十字社で学べる救急法

東日本大震災を体験したり、肉親が脳卒中で倒れたり、大切な友人を若くして亡くしたり、登山中の事故をたくさん見聞きしたり、自分自身が救急車で運ばれたり…そんな経験をする中で、一度きちんと救急の基礎知識を身につけたいなと思っていました。

心肺蘇生の知識や技術など、一生使う機会はないかもしれませんし、ない方がもちろん良いのです。でも万が一、そんな状況に居合わせたとき…何かできたはずなのに、と思うのはどれだけ無念なことかと思います。大切な人だったらなおさらです。講義でも言われましたが、大抵そういう緊急の状況での第1発見者は救急隊などではなく一般人ですし、救急車が到着するまでの5~6分の間の応急処置によってその後が大きく変わってくることも多いと聞きます。(特に脳の後遺症など)

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そんなわけで、日本赤十字社の救急法講習を受けてきました。これは全国各地で開催されていて、誰でも受講できます。受講してとても良かったと感じたので、忘れないうちにメモを残しておこうと思います。私自身も、どんなことをやるのかな?ついていけるかな?と不安だったので。


今回の広島は、基礎講習が1日(4時間半)、救急員養成の講習が3日間(6時間×3)でした。救急員養成講習は、時間を長めにとって2日間で終わることもあるようです。受講料は基礎講習が1500円、救急員養成講習が1700円。これはほぼテキストや教材などの実費だと思います。

充実のテキストが2冊と、市販もされている赤十字のポーチ、キューマスク(人工呼吸で使用するマウスピース)2個、三角巾2枚、保護ガーゼ2枚などが配られます。

そのまま貰えます

【1日目】

学科が1時間ほど、あとは実技。基礎講習の内容は、主に心肺蘇生の方法とAEDの使い方です。傷病者を見つけたとき、まず自分の身の安全を確保することの大切さや、バイタルサイン(生命の徴候)の見極め方などから教わります。現在、呼吸はお腹の動きで確認するのですね。

呼吸が止まっていたら心肺蘇生が必要です。これを直ちにすることが、脳に後遺症を残さないために非常に重要とのこと。医師でない私たち一般人は、死亡の判断を下してはいけません。すなわち、救急隊が到着するまで心肺蘇生は絶対に続けなければならない。他にやめていいケースは、傷病者の意識が戻ったときと、自分の身に危険が迫ったとき。

心肺蘇生は基本的に胸骨圧迫(胸の真ん中を強く押す)30回と、人工呼吸2回の繰り返し。人形を使って実際に皆やります。これがかなり体力を使い、汗がにじんできます。実技は2人1組なので、その間に「AEDを持ってきて下さい」とバディ(相方)にお願いし、AEDが届いたら心肺蘇生を交代してもらう。とにかく心肺蘇生の手は止めてはいけないのですね。

経験談として、意識を失った人を見つけて「誰か119番とAEDをお願いします!」と叫んだら、誰も動いてくれなかったという話も聞きました。これ、とてもよく分かりますし、周囲の人たちを単純に責めることはできないと思います。自分もとっさに動けるかどうか自信がないです。誰かの目をきちんと見て「あなたは119番をお願いします」「あなたはAEDを」と言う必要があるわけですね。一斉メールと個人宛メールの違いにも似ているなと思いました。緊急時であっても(あるからこそ)誠実な意思疎通は大切です。

AEDはあちこちで見かけますが、どういうものかよく分かっていませんでした。Automated External Defibrillator (自動体外式除細動器)の略ですが、心臓に細動(痙攣のようなもの)がある場合にそれを取り除くものだそうです。心臓に刺激を与えて動かすためのものではない。だから、必ず心肺蘇生とセットでおこなうことが大切とのこと。細動を取り除くことができたら、すかさずまた胸骨圧迫を始めなければなりません。

簡単にまとめましたが、細かな注意点はもちろん他にもたくさんあります。これを使える人が増えれば、助かる命は確実に増えるはず。正しい知識を身につければそれほど難しいものではないと感じました。

実際に街なかで人が倒れていたりした時に、一番のハードルは一歩踏み出せる勇気があるかどうかなんですよね。「私にできるのか」という。責任も伴いますし。正しい知識と技術は、それを少し後押ししてくれると思います。

この基礎講習は単独でも受講できますので、まずはこれだけ、ということも可能です。最後に小テストもありました。10問の選択式で、まじめに受けていればまず落ちることはないと思います。

みんな真剣

【2日目】

午前中はほとんど学科、午後は実技。2日目以降は、三角巾の使い方を徹底的に教わることになります。こんなにも多様に使えるんだ! と感動すらおぼえました。

学科では、急病やけがの種類について一通り学びました。脳卒中は私にとっては身近な病気ですし、熱中症などもタイムリーでしたね。病気の徴候や手当の仕方、予防法など。けがは、切り傷などに始まり骨折や熱傷、生物による咬傷(これも山では切実)などまで。

実技ではまず止血法について、傷を直接押さえる直接圧迫止血と、心臓に近い止血ポイントを押さえて血流を止める間接圧迫止血を教わりました。この止血ポイント、押さえると本当に脈が止まるんです(あたりまえですけど)。ちょっと怖かった(^^;)

その後は2人1組で、ひたすら三角巾。まずは包帯法

○包帯として、下記の傷に保護ガーゼを固定する

1. 額の傷
2. ほほの傷
3. 頭頂部の傷
4. 胸の傷
5. 肩の傷(2枚使用)
6. 手の甲の傷
7. 前腕の傷+包帯をした腕を吊る(2枚使用)
8. 下腿の傷(自分の足で)
9. 膝の傷

残りは3日目へ続く。ただの三角の布で、これだけのことができるんです。保護ガーゼをきちんと圧迫して、決められた手順でピシッときれいに巻くことが求められます。

テキストにはもっと応用編もたくさん載っていますが、これだけの実技を繰り返すとかなり三角巾の扱いには慣れてきます。二つ折り、四つ折り、八つ折りもササッ。2日目の時点では、こんなに覚えられない!とかなり不安でしたが…


【3日目】

午前中は学科を10分ほどやったら、すぐに実技。とにかく実践重視ですね。やっぱり、体で覚えるのが一番身につくと実感しました。

三角巾の続きで、今度は固定法です。

○骨折や捻挫の手当として、手足の固定に使う

1. 前腕の骨折
2. 下腿の骨折
3. 膝の骨折
4. 鎖骨の骨折
5. 足首捻挫の固定(自分の足で)

午後は搬送の実習をやりました。けがの手当と同じくらい大事な「搬送」。担架の正しい扱い方、人を乗せる場合や運ぶときの注意点などを学びます。実際に運んでみると、かなり重いんですね~。落とすわけには絶対にいきませんから、とても緊張しました。毛布を担架の代わりに使う設定で傷病者役もやりましたが、少しの揺れや傾きで不安になったりということも実感しました。

残った時間はまた三角巾の復習。苦手なところは何度も繰り返し、先生に質問もできます。だんだんと手慣れてきて、最初に感じていた不安も次第になくなりました。


【4日目】

午前はまず残りの学科。災害救護に関するものでした。広島はちょうど1年前に大規模な土砂災害があったばかり。そんな時に備えて何ができるのか、何をすべきなのか。「正常性バイアスの呪縛」という言葉は深く胸に突き刺さりました。震災でも感じたことです。「まさか自分には起こらない」「自分だけは大丈夫」という根拠のない自信。一年前、それで避難をせず亡くなってしまった一家のお話などもありました。

次に総合演習。傷病者役、発見者役などを決め、グループに分かれてシミュレーションをしました。今回は奇遇にも山での滑落事故という設定。骨折している人、切り傷だけの人、一見何ともないけど意識を失ってしまう人…などなど、発見者役には見えないところで役割が決められ、適切な対応ができるかを見られます。三角巾での包帯法や副子を併用した骨折の固定、担架での搬送など、これまで学んだことを駆使して皆で力を合わせて動きました。その後、お互い意見交換をして反省会のようなものを。

残りの時間はまた三角巾の復習。再び先生の実演を交えながら午後の試験に向けて総復習です。とにかく何度も何度も手を動かしたので、三角巾の使い方は実用レベルで身についた気がします。軽く学科の復習もやりました。

そして、午後はいよいよ試験です。学科試験は40分、今回は記述式もあります。でも先生が強調する重要ポイントをしっかり聞いていれば、まず大丈夫だと思います。合格ラインは8割。

一番緊張したのはやはり実技試験です。止血法、包帯法、固定法を全部で8つほど実演して、2人の先生にチェックされます。包帯法には時間制限があり、三角巾を1枚使うものは1分半、2枚使うものは2分半です。この時間制限で無駄に緊張してあせるのですが…

でも、何度も練習を重ねていたおかげで、大きな問題なく終えられたように思います。バディも3日間同じでしたし。学科もおそらく満点とれたはず…!


と大きな口を叩いていますが、落ちたら笑ってください…。この試験に受かっていれば、「赤十字救急法救急員」という資格がとれることになっています。3年ごとの更新制です。

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想像以上に長くなってしまいました。ここまで読んでくださった方はきっと「受講してみようかな」と興味をお持ちの方だと思うので、ぜひチャレンジしてみてください(^^)/ 仕事と並行して受講するにはちょっとハードかとは思いますが(毎日ぐったりでした)、私は本当に受講して良かったと感じています。正直、最初は完走できるか不安だったのですが。

何かあったときに実際に動ける、実用レベルでの知識と技術が身につく講座だと思います。講師の方がユーモアたっぷりで、経験に基づくお話もとても楽しかったです。そして日本赤十字社広島県支部のスタッフの方々にも大変お世話になりました。4日間、どうもありがとうございました。

日本赤十字社広島県支部

 

2015年8月10日月曜日

白馬三山縦走-その3(終)


3日目。杓子岳と白馬鑓ヶ岳をまわって、猿倉まで下山します。多くの人は途中で1泊して、2日かけてまわるルートだそうです。それもそのはず、10時間以上かかりました。

3:50 起床
4:20 出発
5:35 杓子岳山頂
6:20 朝ごはん
6:40 出発
7:10 白馬鑓ヶ岳頂上
7:20 出発
9:50 白馬鑓温泉小屋(お昼ごはん…早い?)
10:35 出発
14:40 猿倉・鑓温泉分岐着→下山

早起きにもちょっと慣れてきた気がする今日この頃。お水の補充などは前日にすませておいたし、おめかしするわけでもないので、皆準備は早い。

4時過ぎ、まだうす暗いけれどほんのり朝焼けが見えます。山も静か。

出発!

登り始めてしばらくしたら、太陽が顔を出しました。あちこちで「わあ!」「おー!」と声が上がります。

おはようございます

朝日に照らされる山は、また格別の美しさでした。やっぱり、夕陽とは何か色が違うんですよね。

今日のはじまり

一緒に登っていた友達が、朝日に見とれる私のナイスな写真を撮ってくれていました。「ポスターみたいなのが撮れたよ!」って。ほんとだー、自分じゃないみたい。モンベルさん、次シーズンにいかがですか?(笑)

キリッ

朝日が見えた瞬間はちょっと元気になったものの、三山のうち2つ目の山頂、杓子岳までは結構な急登。どんどんスピードが落ちる私…つらい…。

ぜーはー

「なんで、好きこのんでこんなつらい思いをしてるんだろう」
山を登っていると、そう思うことがよくあります。なのに、なんで登るんでしょうね。本当に不思議ですね…。でも、振り返ってこんな景色が見えるとやっぱり「ああ、頑張ってよかった!」って思うんです。山登りを始めなかったら、一生見ることもなかったかもしれない景色。

見事ですねー

途中で見知らぬ人に励まされたりしながら、遅れつつもやっと登頂しました。杓子岳からの眺め…なんと、富士山まで見えたのです。中央付近の一番奥が富士山です。水墨画のようでした。

夢のような景色

杓子岳山頂(2812m)

しばらく山頂ではしゃいだら、白馬鑓ヶ岳へ向かって出発。いかにも縦走らしい絵、というものを今回はたくさん見ることができました。そして、その度にシャッターをきってしまう(^^;)

ちっちゃな人間が、見えますか?

途中、ちょっと広い所で朝ごはん。山小屋で、朝ごはんをお弁当にしてもらったのでした。とても豪華で、朝にはちょっと多いくらいだったので、とりあえず半分だけ。またあとでお腹が空いたら食べよう。

頂上宿舎のお弁当。豪華!

お腹が満たされると、ちょっと元気になって機嫌もよくなります。GO!

縦走、って感じしますねー

やがて分岐にでます。私たちが向かうのは「鑓頂上」ですが、その向こうに見えるのは…「不帰ノ嶮(かえらずのけん)」。鈴木みきさんの本にも出てきて、気になっていたところです。でも非常に危険なところらしく、名前からして怖い…いつか行けるだろうか。

分岐

やっと山頂が見えてきました。おーい。それにしても素晴らしい天気…!

みんな速いよー

白馬鑓ヶ岳山頂(2903m)

これで無事、白馬三山に登頂しました。わーい( ´ ▽ ` )ノ
しかし、下山するまでが山登り。

もう、ずーーーっと縦走していきたい

この辺で、探していたコマクサをやっと見つけました。可愛らしい、ピンク色のお花。こんな岩しかないところに咲くなんてすごいねえ、と言ったら、こういう所にしか咲けないんだよ、と。そりゃそうか。でも、ふしぎですよね。生命のふしぎ。

愛らしいコマクサ

吸い込まれそう

下りでも、何ヶ所か雪渓がありました。ここは、何とかアイゼンなしで行けそうかなと…。通り道には、こうして赤っぽい色がつけてあります。

小さな雪渓

おつかれー!と友達が撮ってくれた勇姿

富士山に比べると体力的にも時間的にもきつかったはずなんですが、あの時よりもだいぶ楽しめて余裕を感じました。自分自身の成長も少しはあるのかもしれませんが、たくさんの高山植物や、変化に富む景色の魅力が大きいのかもしれないなぁと思いました。富士山からの眺めももちろん美しいと思ったのですが、見えるのはほとんど雲なので(笑)。こうして、アルプスの山々に囲まれてみると、何か違うなーと。

地球の隆起はすごいです

この下りルートには、鑓温泉小屋の手前にしばらく鎖場が続きます。不器用な私はちょっと緊張しましたが、慎重に乗り切りました。岩が濡れているようなところもあって、結構危険です。

鎖場です

ニッコウキスゲ…美しい

雪渓の端のあたりを見ると、こんなふうになっています。こんな所、踏み抜いたらと思うと恐ろしいですね…

雪渓の端っこ

水場の鎖…気をつけて

白馬鑓ヶ岳からおよそ2時間半、やっと白馬鑓温泉小屋が見えてきました。

休めるよ~

入浴だけもできるのですが、温泉なんて入ってしまったらこの先歩けなくなる…ということでガマンガマン。

入浴だけなら500円

温かいものがほしいね、ということで皆おうどんを頼みました。10時前…お昼ごはんにしては今思えば早いですが、十分腹ペコでした。「大雪渓」のグラスに入っているのはお茶です。「大雪渓」というお酒、この辺のお酒らしくて気になったんですが結局飲まないで帰ってきてしまいました。

向かい側にビールが見える…

山小屋の方に「冬はどう過ごすんですか?」と聞いたら、「この辺りは雪崩で潰されるので、毎年小屋を建て直すんですよ」という返事。びっくり!!検索してみたら、たしかにそういう話が出てきました。潰される前に解体して、保存しておくんだそうです。そんなこと、想像すらしたことなかった…

白馬鑓温泉小屋の食堂

トイレには100円入れてきました

しばらく休んでから、また出発。なんと、また雪渓が…結構長い。下りの雪渓はさらに怖いのです。アイゼン、つけなくても大丈夫だよーと言われてそのまま渡ってしまったけど、これは付けるべきだった!何度かすっころびました。自分で判断するのが大切ですね。

トラウマになりそうー

でも何とか無事に通過。他にもちょこちょこ小さな雪渓がありました。

通ってきたところが、ずーっと線になってる

高山のお花たちも、絶えず励ましてくれます。

クガイソウ?

あこがれの水芭蕉

池糖を渡る

水芭蕉の大群!

小日向のコルを過ぎたあたりで、小休憩。ちょっとずつ雲が山にかかり始めていて、私たち本当にラッキーだったね、と盛り上がる。登った雪渓はどれかなー、などとワイワイしつつ…

あんなところを登ったなんて信じられない

このあとが、また長かった…だんだんと、展望がなくなっていくんです。周りを木々にかこまれて、ひたすら下る道になります。蓄積した疲れのせいもあって、次第に足が前に出なくなってきました。そんなとき、先に行っていたはずの友達2人が待っていてくれて前後を挟んで連行してくれました(笑)。ありがとう!

単独行もいつかやってみたい気持ちはあるのですが、やっぱりこういう時に仲間にもらえるパワーというのは大きいですねー。

そして、ついに猿倉への分岐に到着。ここで、遅れている仲間を待ちます。

鑓温泉と猿倉への分岐

高山の紫外線は洒落にならないので、日焼け止めはもちろん、長袖長ズボンに手袋、帽子、サングラス、と万全を期したつもりだったのですが…長袖と手袋の間がこんなことになっていました。

恐るべし…!

全員そろったら、猿倉荘でタクシーを呼びました。到着するまでかき氷。何年ぶりでしょう。最近、冷たい物がめっきり苦手になっていたのですが、久々に食べたいと思いました。美味しかった~。

王道のいちご氷

夜は、焼き肉で打ち上げです。乾杯!

ホテルの方おすすめのお店で

4日目は、また広島まで帰るだけなので省略(^^)

とっても充実した4日間でした。自分には少し背伸びした山行でしたが、無事に終えることができて本当によかったです。一緒に登らせてくれた仲間に感謝。またちょっとは成長できているといいな、と思います。そして行ってみたい山がさらに増えました。アルプスにも、また絶対に行きたい!夢を膨らませつつ、毎日をがんばろうーと思います☺

 

2015年8月9日日曜日

白馬三山縦走-その2


早起きして2日目です。

4:00 松本出発
6:15 猿倉登山口スタート
8:00 大雪渓登りはじめ
9:40 大雪渓おわり
10:00 大雪渓から出発
11:00 避難小屋着(お昼ごはん)
12:15 白馬頂上小屋着(小休憩)
12:45 白馬岳山頂へ出発
13:30 白馬岳山頂
14:00 白馬山荘でビール
17:00 夕ごはん
19:30 就寝

3:30に起きてささっと準備、4:00にホテルを出発。朝焼けがとても綺麗でした。

コンビニから…

まずは白馬駅へ。雪渓が何ヶ所もあるので、ここでアイゼンを借ります。借りられるのは4本爪の軽アイゼンで、1000円です(2015年7月現在)。返却すると300円が戻って来るので、実質レンタル料は700円ですね。あとで知ったのですが、新品を買っても1000円なのです(猿倉登山口で売っていました)。今後も使う予定があるなら、1000円で新品を買ってしまっても良いかもしれません。

ただ、単純な構造でベルトは自分で正しく巻き付ける必要があるので、付け方は難しくて四苦八苦しました。ワンタッチで付けられるものは楽そうだったな。

ここでアイゼンを借りる

猿倉登山口へ向かいます。これから向かう山々が迫ってきて、何だか胸がいっぱいになる。やっぱりアルプスは違いますねー。広島の山の、こんもりした優しい表情とは違う。キリッと険しい、でもなぜだか引き寄せられてしまう感じ。

車窓から、これから登る山たち

猿倉登山口の駐車場は、朝4時ごろには満車になってしまうそうです。車中泊で前泊する人が多いのだとか。というわけで、八方の駐車場に止めてタクシーで向かいました。5000円かからなかったと思います。私たちは5人だったのでバスより安上がりでした。相乗りできる相手を探している人もたくさんいます。

タクシーで20分ほどで猿倉荘に到着。ここでトイレに行ったり、ストレッチをしたり、記念写真を撮ったり…。

猿倉荘

登りはじめは意外なほどに穏やかな道でした。まだまだ前哨戦。

レッツゴー

でも、見えてくる景色がいつもと違う…!

登れるんかいな

沢も渡ったりして…

そして、1時間ほどで白馬尻小屋が見えてきました。

奥に見える白いものは…

この日の(個人的)ハイライト、大雪渓。日本一の雪渓だそうです。落石事故など遭難の話も多く、私はかなり緊張していました。

白馬大雪渓

白馬尻小屋

この少し先で軽アイゼンを装着したのですが、かなり手間取りました。近くにいたお兄さんが同じ物を持っていたので親切に教えてくださって、とても助かった。レンタルだと事前に練習もできないし、ささっと説明されても覚えきれないので、よく調べていったほうが良いかもしれません。

いよいよスタートです。傾斜はだんだんきつくなっていきます。

一歩ずつ

石が落ちてくる瞬間は、この日もいくつか目撃しました。雪渓の上では音がしないので危険なのだそうです。渡りきるまでは基本的に休憩もしない方が良いとのこと。でも、きっついんですよね~(^-^;)

落石のあと

途中、振り返って撮った一枚。かなりの傾斜で、ちょっと油断したら滑ります。立ち止まるのもままならない…でも疲れた…早く座りたい…

足がすくみ、スキーはやっぱり無理だと思った

そんなこんなで、ようやっと大雪渓を登り切りました…ぐったり。あちこちに見えるお花たちが「よくがんばったね!」と言ってくれてる(気がする)。この辺り、本当にお花が綺麗でした。

鮮やかなクルマユリ

まだまだ登ります。高い山はどこもこうなんですかね…だんだんと富士山を思い出す、岩ゴロゴロの風景に。

足場が安定しないので疲れる

そして今度は小雪渓のトラバース。距離はそれほどないですが、傾斜がきついので足を踏み外したらどこまでも滑っていってしまう…なのでまたアイゼンを装着。緊張しながら、慎重に渡りました。

ある意味大雪渓より怖いかも…

そして避難小屋に到着!やっとお昼ごはんです。ぐったりしつつも、美味しいパンをほおばったりみんなでおやつ交換などしていたら、だんだん元気になりました。休憩も大事ですね…

後ろの山にもそそられる

あと一息、がんばろー!

残雪があちこちに

ミヤマシシウドかな…?

そして…ついに見えてきました。本日の宿、白馬岳頂上宿舎です。

やったぁ!

しかし…まだ実は登頂していません。山頂はこの先。ひとまずチェックインして、使わない荷物を置いてから山頂に向かうことにします。ちょっと休憩もしないとね…。

500ml 450円のコーラをみんなで少しずつ分け合って飲みました(笑)。こういうときの冷たい炭酸って元気が出ます。そして、モンベルの会員カードを持ってこなかったことを後悔しました。会員の方はぜひ持っていきましょう。山小屋、500円引きでした。コーラが買えます。

ちょっとのんびりしてから、山頂に向かって出発。上に見えているのが日本一の収容人数を誇る白馬山荘です。山頂はまださらに先。この白馬山荘はレストランが素晴らしいそうなので、あとでビールを飲む予定☺

足が重い…

ウルップソウ

意外に、遠いです…疲れてるからでしょうか。遙か向こうにとんがりが見えます。片側が切り立っているのが特徴です。

まだまだ

45分ほどかけて、やっと1つめの白馬岳山頂へ。そこからの眺めを見たら、もう本当に悔いはない、という気持ちになりました。疲れも吹っ飛びます。憧れの剱岳も槍ヶ岳もくっきり見える。初アルプスでこんなにお天気に恵まれてしまうと、この後がこわいな…とまで思ってしまいました。

このときの満たされる感じ、何と言えばいいんだろう。うまく言葉になりません。でも日本にこんな場所があったんだ、この目で見ることができて本当に幸せだ…と思いました。そしてあの人にもこの人にも、見せてあげたいなぁなんて。

正面の一番高いとんがりが剱岳

ひたすら周りの山々を眺めて山頂を堪能したあと、さっきの白馬山荘まで下りてやっと乾杯です。

みんな景色に目を奪われてる

実は飲もうかどうか迷っていました。富士山のときは高山病が怖くて一切飲まなかったので、もし体調に異変が出たらみんなに迷惑かけるし…と。ここも3000m近いですから。でも富士山の時より体調も良く余裕があったし、みんなも「飲んじゃえ!」と言ってくれたので、ゆっくり飲んでみようかと少しずつ口をつけてみました。結局飲み干しましたw 生ビールは800円だったかな。

ケーキ組とビール組に分かれ、女子はケーキでした…あれ?

白馬山荘のスカイプラザというレストラン、眺めがまた絶景なのです。

でも窓際はちょっと暑い

頂上宿舎へ戻る道のりでも、また山々にうっとり。似たような写真を何枚も何枚も撮ってしまいました。

山肌がたまらない

白馬岳頂上宿舎の夜ごはんは、バイキング形式です。好きなものを好きなだけ取れるので、楽しい。おかずの種類もすごく多くて、あれもこれも食べたくてちょっとずつほぼ全種類を食べました。ケーキもあったのがうれしい(^^)

手前のすき焼きがまた絶品

部屋に戻るころには、みんなもうぐったりです。お風呂はないので、それぞれ洗面所に行って顔や体を拭いたり、歯を磨いたり。石鹸や歯磨き粉は環境汚染につながるので使いません。買ったばかりの「ナノタオル(ファイントラック)」という製品が、とても使いやすくて大活躍でした。

また山小屋の写真を撮り忘れた…今回は5人で8畳の個室が取れたのでとても快適でした。夕焼けを見に行きたかったのですが、夏だしなかなか日が沈まないので、みんな睡眠に入ってしまいました。私は諦めきれず、ちょっとだけ抜け出して夕陽にごあいさつへ…。と思ったら、あとから心配してお一人ついてきてくれました。ありがとうございましたー(涙)

小屋の裏にはテント場…いつかやりたい

「あの辺まで登らないと見えないよ」と言われ、岩ゴロゴロの道をスリッパで登る…がんばった!

夕陽に会いたい人たちがたくさん

おかげで、素晴らしい風景を見ることができました。こうして、太陽のまわりにみんなが集まって「わあ!」とか歓声を上げながら笑顔になっているのを見ると、太陽の力って本当にすごいなと思います。そして、こんな光景はきっと何千年も前から変わらないのだろうなぁと…

沈むよー

同じ太陽なのに、なぜこんなに光の色が変わるんでしょう。夕陽に照らされた辺りの山々はあたたかで、また違った表情を見せてくれました。明日の朝、また朝日に照らされる山たちに会うのが楽しみです。

おやすみなさい

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